つばさ会トップ   同好会トップ   つばさ川柳トップ



           ―つばさ川柳125号 

湯たんぽと亭主の足を勘違い      蜂巣  徹
白という色しみじみと雪の朝
席ゆずりゆずられるのも人の情     藤沼 智弘
油断したヘッドロックのレスリング
素直には咲いてくれない梅桜      宝納 徳一
春寒にトイレかち合う老い二人
花の名はボケだが季節忘れない     堀内今一歩
新婚の会話周りの目が見えず
ウサギ好きヘビは厭だと孫の言     蒔苗八十八
粧う山嫁にゆくのか白無垢で
少子化に出来ちゃった婚頼もしい    若松 靖夫
文句言う事柄あって生きる糧      
文明の先輩呉れる毒ばかり       岩崎 篤子
平民もセレブも同じ空気吸い
日当たりのテラスに鳩と閑居する    上田 将子
夕陽差す明日の日和を雲に問う
スクランブル夜昼なしに護る空     木村  泉
七草の粥で正月気分抜き
味よりも酒量で飲んだ頃の意地     佐原 利幸
悪さしたガキ大将が今教師
原発のメリットを見ぬバカの壁     鈴木  至
歯を除き身はがたがたの八十路入り   
コンビニもシニア相手の品揃え     末田 洋一
土壇場で怪しくなってくる本音
欲出して一句を拾う万歩計       竹重 満夫
医療費がトップに躍り出る家計
青春が重ねて見える飛行雲       田所  健
薬飲み鍼打ちながら酒も呑む
先見えず財布の紐も固くなる      中井  極
禁解けてネット騒がす選挙戦
潮騒の香りを浴びて気が満ちる     濱田 喜己
来賓の長広舌へブーイング
一升もすぐ軽くなる独り酒       願法みつる
足腰を鍛えてあの世まで歩く


課題  『見 舞』         みつる選

  被災地にひと足早い選挙戦     中井  極
  病気火事あるけど落選にはどうか  若松 靖夫
  見舞金届かぬうちに消えている   蒔苗八十八
  図らずもノロウイルスの見舞い受け 上田 将子
  歳重ね仕分けに悩む見舞い方    濱田 喜己
  東北を見舞う心のいつまでも    木村  泉
  見舞いとは嬉しいけれど恥ずかしい 藤沼 智弘
  見舞う人いつ見舞われる老いの空  岩崎 篤子
  お見舞いに来られ困惑ただの風邪  田所  健
  お見舞いに優しい笑顔ありがとう  竹重 満夫
  近況が大のクスリになる見舞い   佐原 利幸
  遅れ馳せ見舞いに行けば退院後   堀内今一歩
  見舞いゼロ妻の憤怒を聞くばかり  鈴木  至
秀 鉄拳を今でも見舞う漫画界     蜂巣  徹
秀 被災者と膝つきあわせ両陛下    宝納 徳一
秀 見舞金少し値切って屋台酒     末田 洋一
軸 同じ怪我体験談で勇気付け     願法みつる

 課題を詠み込まずに作句した場合、一句独立した句が課題とは就かず離れずにある必要があります。逆に放れすぎて課題を示さないと句が意味をなさない場合は、課題に寄りかかっているとされ、失敗作です。

 今回も某句会での没句について考えてみます。課題は「流儀」。この課題の選者が抜いた天位句は、「一匹の蟻で今日まで押し通し」でした。他に「来るものは風も女も拒まない」とか「下手な字だから丁寧を主義とする」などの秀句がありました。如何ですか。

  「芸道が普遍の波に薄くなる」 
  「テーブルのマナーは全て箸にする」 
  「焼酎の流儀は問わぬ割られかた」  
  「人生に流儀があって面白い」  
  「かたくなる流儀を守る律儀者」

 右の句は何故没になったのでしょう。まず「流儀」の意味を確認します。「@芸道・武道などで、その人その一派などに古くから伝えられてきたやり方・様式Aその人やその家などの独特のやり方」
一句目、芸道が薄くなる普遍の波とは何でしょう。二句目、面白い見付ですが、マナーとは行儀作法のことですから流儀とは少し異なると思われます。三句目、焼酎の自律的な飲み方のことを言いたいのでしょうが、割られかたという表現は他律的です。四句目、人生の流儀という表現に奇異な感じがしませんか。面白いと自分で言い切ってしまっては、身も蓋もありません。五句目、かたくなる流儀とは。頑なな流儀の間違いかも知れませんが、堅すぎます。

 次号課題は「無 形」。課題句二句と自由句は三句をご投稿下さい。締切日は、五月末日です。