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           ―つばさ川柳126号 

欲出して一句を拾う万歩計      故竹重 満夫
医療費がトップに躍り出る家計
お見舞いに優しい笑顔ありがとう (お見舞い)
現ナマがいいとはついに言い出せず(お見舞い)
試食つきテレビがあれば大はやり    藤沼 智弘
裁判官へりくつ並べ免訴とか
新緑に出番とはやる万歩計       宝納 徳一
本音でも独り善がりは怪我の元
若がって整骨院に通う羽目       堀内今一歩
読書してしみじみと知る無教養
雪深く啓蟄の虫二度寝する       蒔苗八十八
そこそこの野暮な川柳賞を取り
陛下より嫁の外遊騒がれる       若松 靖夫
恐竜のウイルス鳥が今の世に    
大津波ジイジとバアバどの星に     岩崎 篤子
お犬様前立腺のオペも済み
エンディングノート書きたい歳となり  木村  泉
大臣の舌が禍椅子が逃げ
早朝の鳥と鼾のハーモニー       佐原 利幸
お酒なら何でも来いといった頃
狂乱か朝日の社是は安倍つぶし     鈴木  至
虚と実の歴史認識飛び通い   
君が代に条件反射する背骨       末田 洋一
便利さに染まりなくしたど根性
故郷に集いて偲ぶ亡き恩師       田所  健
懐かしき方言混じるクラス会
八百長と知りつつ握る手には汗     中井  極
五輪招ぶ熱意も失せる二枚舌
懐かしむ無念無想の遍路旅       濱田 喜己
大病を患って得た死生観
呼び出しに情のこもらぬ都市砂漠    蜂巣  徹
海外へ夢のパンフもゴミの山
町内の話題も添えてとる夕餉      願法みつる
のど飴をしゃぶり無口な羅漢達

課題  『無 形』     みつる選

 復興は無形の宝この絆       蒔苗八十八
 先達の無形の遺産この平和     岩崎 篤子
 母性愛無形のものの持つ深さ    木村  泉
 無形物知能生み出す宝物      藤沼 智弘
 郷土にも伝承願う文化財      若松 靖夫
 えせ政治国の形はそっちのけ    鈴木  至 
 むき出しの観観観が発火点     濱田 喜己
 人災は見えない嘘がバレるとき   中井  極
 中味より気遣い嬉しお手土産    宝納 徳一
 へぼ将棋道と言うには遠すぎる   蜂巣  徹
 千年の歴史がにおう武士の古都   末田 洋一
秀 被災地へ太くて強くなる絆    佐原 利幸
秀 友逝けり熱い想い出残し置き   堀内今一歩
秀 江戸しぐさ無形文化の美しき   田所  健
軸 親の背を見せるしかない徳の道  願法みつる


 昨年十月の大西芙三男氏に続き、五月二日、竹重満夫氏が亡くなられました。六年間の気丈な闘病であられた由。今にして思えば、先号のご投句では胸の内を語っておられたのかも知れません。ご冥福を祈ります。

今回は、初心者も多く参加された某所の合同句会で、没になった句の検証記事を紹介します。
初心者と言っても作句年数は経ておられます。ただ自分の頑なな殻に籠もって視野を閉じて居られる方々や、月一回の句会分しか作句しないという方々です。

*リズム崩れ
上六句・中六句・中八句・中九句・下六句
(これらは工夫一つで十七音に整えられます。字余りになる場合は上句で処理するという基本的な原則はありますが、それでもリズムが奇異になることがあります。この場合は原句の言葉に固執するのではなく、別の措辞を探すことが必要です。それが作句の楽しみでもある訳ですから。特に下六句は何気なく使ってしまう落とし穴があります。)
*上句だけ差し替えの安易句
 「緑枯れ原発息子昼寝さす」「批判浴び原発息子昼寝さす」 (課題は「緑」と「浴びる」)
 (課題が違うからという考えは安易です。句意もま
た意味不明。下句の止め方もオカシイ。つまり川柳作句の姿勢ではないと言うことでしょう。)
*新語・誤字
 「口すべる軽冗談が命取り」 (軽い冗談?)
 「島二つ引くに引けない正念場」(退くに退けない)
 (音字数を合わせる為の新語は不可です。ケイタイとか携帯のように慣用化されていれば別です。また誤字は無条件にアウトです。)
*楽屋落ち
 (ゴルフを知らない読者にバンカーとかチップインと言っても通じません。他の分野でも同じ事です。句は万人が読んでくれることを前提に表現する必要があります。勿論、ゴルフ川柳とかケーキ川柳とか、特定分野の川柳の場合は別です。)
*語呂遊び
 「湯浴みして上げ膳据え膳姫御前」「青山も青木青田もみな緑」「消費税買うまい出ない動かない」
 (これではサラ川流のお遊びになってしまいます。語呂遊びには別のジャンルがあります。)
*ダカラナニ
 「男女共日本は長寿世界一」
 (当然の事実を述べただけでは文芸ではありません結果、読者はナニモ感じません。実はこの種の句が実に多いのが初心者です。自分句・説明句。)
*意味不明句
「濾過されたみどりに映える喜寿の顔」「イングリッシュシャワー浴びても変わらない」「イクメンも雷鳥さんの蒔いた種」「ビール浴びもったいないと勝ち気分」
(作者の想いを全て述べるのではなく、焦点を絞って表現しないと、読者には理解出来ません。川柳は省略の文芸です。詩性味とは別次元です。)

次号課題は「名 案」。課題句二句と自由句は三句をご投稿下さい。締切日は、八月末日です。