本文へスキップ

つばさ会は航空自衛隊の諸行事・諸活動への協力・支援等を行う空自OB組織です。

電話/FAX: 03-6274-8644

〒160-0002 東京都新宿区四谷坂町9番7号
ZEEKS四谷坂町ビル 3F つばさ会本部

ドクター大橋の「元気で長生き」講座(5)


                            H28.10.18

 ドクター大橋の「元気で長生き」講座(5)

    社会医療法人ジャパン・メディカル・アライアンス 医師
                  つばさ会会員 大橋 幸一郎

☆---------------------------------------------------------------------☆

 今回の「元気で長生き」講座は各論の3回目、健康寿命や介護予防を阻害する3大因子の1つ、認知症のお話です。

 皆様も既にご承知の通り、高齢化が急速に進む日本では認知症の増加が大きな社会問題となっています。現在、国内の認知症の患者さんの数は200万~300万人と言われ、2040年頃には400万人位まで増加すると見込まれているのです。年齢別の頻度は60歳代前半で約1%、その後は5歳年を取るごとに倍増し、90歳では6割以上の方が認知症の範疇に入るものと推定されております。読者の皆様には、何とか残りの4割に入って頂き、認知症と言われずに90歳を元気に迎えて頂くよう、今回は認知症予防の話を中心にお話ししましょう。

 まず、認知症とは「一度は正常までに発達した認知機能が後天的な脳の障害によって持続的に低下し、日常生活や社会生活に支障をきたすようになった状態」と定義されています。認知症の特徴的な症状の1つに「物忘れ」があります。物忘れには2つの種類があり、1つは生理的、加齢に伴う物忘れで心配のいらない「物忘れ」、もう1つは認知症の症状としての「物忘れ」です。それぞれの特徴として、心配のいらない「物忘れ」は自分の物忘れを過大に心配して悩む、質問に対して真剣に考えようとする、質問に窮すると困った表情を示す、自分で何とか思い出そうとする等ですが、逆に認知症の「物忘れ」の特徴は、自分の物忘れに無頓着で時に物忘れを否定する、考えようとせずにいい加減に答える、言い訳や弁解が多く取り繕いがみられる、家族に手助けや回答を求めることが多い、と言われています。また、病的な「物忘れ」の場合、物忘れの程度が短期間の間に進行し、物忘れによって日常生活に大きく支障をきたしていることが判別のポイントとなります。皆様が心配している「物忘れ」はどちらのタイプの物忘れでしょうか?恐らくは前者の心配のいらない「物忘れ」だったのではないでしょうか?

 しかしながら、この検査だけではあまりにも大雑把な基準であるため、外来では標準的な検査の1つとして、表1に示すような「長谷川式認知症スケール」をはじめ様々な検査を実施しております。読者の皆様には1度、表の質問に従って検査を実施し点数をつけてみて下さい。如何だったでしょうか?恐らく全ての皆様が21点を上回っていたことと思います。がしかし、喜ぶのはまだ早いかも知れません。軽度認知症の段階では21点以上を獲得する患者さんも少なくなく、この場合、長谷川式スケールのNo2,7,8,9の項目で特に点数が低かった場合、認知症の可能性を考える必要があるとされています。軽度の認知症を疑った場合、頭部MRIや脳血流検査等を実施し、その結果から最終的に認知症の診断を下していますが、それでも確定診断が難しく経過観察になっているケースもあります。




























 ここからは認知症予防のお話しです。皆さんの中には、「認知症は予防できない」「認知症になったら治らない」とお考えの方はおりませんか?正しくは、「認知症は年をとれば誰でもかかるのではなく、加齢によって増加するが誰もがかかるわけではない。」、「どうせ治せないから治療は要らないではなく、進行を抑えたり症状を緩和する薬やケアがあるので早めに医師に相談する。」、「予防薬がないから防げないではなく、発病や進行を抑える方法が色々ある。」です。確かに現在の医療では進行を遅らせるのみで治すことはできません。しかし現代における認知症は、早期発見・早期治療、更には予防する病気となっているのです。医学の発展は凄まじいものがあり、近い将来、根治薬が開発され、予防ワクチンが生成される可能性があります。近い将来において根治薬が開発された時、既に多くの脳細胞が消滅し治療は極めて困難と言われないよう、今日からでも認知症の予防を実践してみましょう。

 遺伝と加齢は認知症発症の2大危険因子でどうにも変えようのない因子ですが、その他の危険因子として挙げられているのが、女性、頭部外傷、メタボリック症候群(糖尿病や高血圧など)、喫煙、大量飲酒、趣味が少ない、運動不足、対人交流がないなどの因子です。この中で特に注意したい危険因子がメタボリック症候群です。糖尿病では認知症のリスクが2.1倍、高血圧では5.3倍、毎日20本以上の喫煙者ではリスクが2.37倍に上昇するとのデータがあります。趣味や娯楽(週に数回以上実施)に関する認知症リスクのデータとしては、チェスやオセロなどのボードゲームが0.26倍、読書0.65倍、楽器演奏0.31倍、クロスワードパズル0.59倍、ダンス0.24倍、散歩0.67倍、水泳0.71倍と有意差が認められているものがあります。まだまだ明確な予防法をお示しするにはデータ不足の感がありますが、最後にこれらの事実を基盤として、米国のアルツハイマー病学会が提唱しております「脳をすこやかに保つ10か条」を紹介致します。
 1. 脳を第1に:健康は脳から。脳は体の中でも最も大切な臓器の一つです。脳を大切にしましょう。
 2. 脳の健康は心臓から:心臓に良いことは脳にも良いのです。心臓病、高血圧、糖尿病、脳卒中を予防するために、出来ることを毎日続けましょう。これらの生活習慣病があると、認知症になるリスクが高くなります。
 3. 自分の測定値を知る:体重、血圧、コレステロール、血糖値を正常値に保ちましょう。治療をしても数値が改善しないと予防は出来ません。
 4. 脳に良質の栄養を:脂肪は少なめに、抗酸化物質(ビタミンEなど)の多い食品を摂りましょう。魚を1日1回以上食べましょう。
 5. 体をよく動かす:運動(特に有酸素運動)は脳の血流を促し脳細胞を刺激します。1日30分歩くなど、出来ることから。運動すると心も体も活動的になります。
 6. 心にも適度な刺激を:脳の活動を盛んにすることによって脳の活性が高まり、脳細胞のネットワークが強化されます。読む、書く、ゲームをする、新しいことを学ぶ、クロスワードパズルを解くことなどに挑戦しましょう。
 7. 人とのつながりを:心身の活動に社会的な交流が加わった活動に参加することは、認知症を防ぐ最も良い方法と言えるでしょう。人との会話を楽しみ、ボランティア活動や地域活動に参加しましょう。
 8. 頭のケガに注意しましょう:頭のケガには要注意。転ばないように家の中を整理整頓する、車に乗るときは必ずシートベルトを着用する、自転車に乗るときはヘルメットをかぶるなど、頭部を保護することが大切です。
 9. 悪い習慣を見直す:不健康な慣習を改善しましょう。タバコはやめて、アルコールを飲み過ぎないようにしましょう。
10. 将来のために今日から始めよう:自分自身の明日を守るために、今日から出来ることを始めましょう。

 次回はいよいよ最終回、最近話題になっておりますアンチエイジングのお話で私の「元気で長生き」講座を締めくくりたいと思っています。



☆---------------------------------------------------------------------☆



              

つばさ会トップページ
「元気で長生き」講座トップ



大橋 幸一郎 先生