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ドクター大橋の「元気で長生き」講座(6)


                            H29.01.04

 ドクター大橋の「元気で長生き」講座(6)

    社会医療法人ジャパン・メディカル・アライアンス 医師
                  つばさ会会員 大橋 幸一郎

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 いよいよ「元気で長生き」講座も最終回を迎えました。講座のフィナーレは「アンチエイジング(抗加齢)医学とエビデンス(科学的証拠)」のお話で締めくくりたいと思います。

「老化研究の歴史」
 1980年代までは、加齢のプロセスは非常に複雑で、人が介入できるものではないと思われていました。最近になって老化の研究が進むとともに、加齢は避けることのできないものではなく、介入によって老化をある程度遅らせ得ることが解ってきたのです。しかしながら、研究はまだまだ緒に就いたばかりであり、具体的に何を実践すれば寿命を何年間伸ばせるという明確なエビデンスを得るまでには至っておりません。
 2001年にデンマークで実施された研究に、70歳以上の一卵性双生児387組を追跡調査した興味深いデータがあります。この研究によりますと、年齢を伏して撮影された顔写真を第3者にそれぞれの見た目年齢を推測して貰った結果、7年後の時点で双生児のうち37%の人が死亡。その多くは撮影時に実際の年齢に比して見た目が老けた人だったということです。この研究によって、寿命は遺伝子のみによって影響を受けるものではなく、生活してきた環境からも大きな影響を受けるということが明らかになってきました。ある研究者は、影響を与える割合は遺伝子が3割、環境が7割と述べております。

「活性酸素と老化」
 それでは寿命に影響を与える環境因子とは一体何なのでしょうか?環境因子の中で最も注目されているのが活性酸素です。人は呼吸するたびに酸素を体内に取り入れ、高いエネルギーを産生しています。その反面、体内に入った酸素の約2%は空中で釘を錆びさせると同じ活性酸素となり、遺伝子や細胞にダメージを与えます。若い間は体に備わっている活性酸素除去能力(抗酸化力)が十分に働きますが、残念ながら加齢とともにその能力は低下し老化の進行に拍車がかかります。かといって、呼吸を止めて活性酸素の発生を抑えるわけにはいきません。呼吸以外にも活性酸素を発生させる様々な要因が指摘されております。現在解っているものはタバコや紫外線、食品添加物や多量の飲酒、そしてストレスで、これら活性酸素を発生させる要因を避けることが大切です。加えて生体にもともと具備されている抗酸化力とともに、出来てしまった活性酸素を除去する「抗酸化力」を高めることも重要です。抗酸化に働くものとしてはビタミンCやビタミンE、ポリフェノールなどがあります。また体内の抗酸化酵素は蛋白質と銅や亜鉛などの金属(ミネラル)から出来ており、いずれも全て食事から摂り込む必要があるのです。
 食事の中でポイントとなるのが野菜です。植物は自ら移動できないため、紫外線や虫、動物から身を守るために強い色や香り、辛味や苦味を作り出してきました。これらの物質はフィトケミカル(植物由来の化学物質という意味)と呼ばれ、特に野菜や果物、豆類や海草、お茶やハーブに含まれており、強い抗酸化作用を示す化学物質です。よく知られているフィトケミカルにニンジンやカボチャに含まれるポリフェノール、大豆に含まれるフラボノイド、緑茶に含まれるカテキンなどがありますが、実は殆どの植物に含まれておりその種類は約1500種類にのぼるということです。つまり、植物性食品を多く取ることによって抗酸化力を高めることが出来ます。

「サイトカインと老化」
 フィトケミカルの他で老化に影響を与える物質にサイトカインという物質があります。サイトカインとは体を構成する様々な細胞から分泌されている体に影響を与える物質で、よく知られているのが脂肪細胞から分泌されているアディポネクチンです。アディポネクチンは通常の脂肪細胞から分泌されインスリンの働きを助ける物質ですが、高カロリーの食事や運動不足で脂肪細胞が肥大化するとアディポネクチンの分泌が減少し、血圧を上げるアンギオテンシンUなどが分泌されることが解ってきました。筋肉細胞も同様で、適度な運動をすると筋肉細胞からは体に良い働きをするサイトカインが分泌されますが、筋肉を使わないと筋肉量が落ちて脂肪細胞に置き換わり、体に悪影響を与えるサイトカインが分泌されるようになります。

「カロリーリストラクション(カロリー制限)と若返り」
 2009年ウィスコンシン大学が実施したサルの実験が注目を浴びました。通常食の40%カットした超低カロリー食で飼育された赤毛サルは寿命が延び、見た目も若々しかったという研究です。カロリー制限をしたサルでは細胞中のミトコンドリアを活性化させエネルギー効率を高めるサーチュイン遺伝子が活性化され、まるで指揮者のように身体全体に働き多くの老化因子を抑えることによって肌、血管、脳など様々な器官が若々しく保たれるという訳です。しかしながら、この効果はまだ人においては実証されておりません。更に最近になって、米国国立老化研究所からカロリー制限には寿命を延ばす効果がないという研究結果が報告されました。どうもウィスコンシン大学の研究では通常食のサルは糖分が多く精白された人工的な食事、つまりは不健康なジャンクフードだったようです。カロリーを制限すれば確かに糖尿病、心血管病、関節炎や憩室症のリスクが低下し、生活習慣病をはじめとする病気の予防に効果があることが解っていますが、デメリットとして筋肉量の減少、骨量の減少、低体温、ホルモンバランスの乱れなどの逆効果も指摘されています。最終的に、健康に影響を与える因子として、遺伝子、環境、食べ物が重要ということで、あるセオリーが全ての人にとっていい結果をもたらすという訳ではないようです。

「体内時計及びストレスと老化」
 その他、決まった時間にベッドに入り決まった時間に起きることを心掛け、体内時計を整えることが重要と言われております。体内時計を整えることによって、メラトニンや成長ホルモンの分泌が増加し、筋肉の量が増えるとともに基礎代謝が上昇し、加えて集中力や免疫力がアップするという訳です。成長ホルモンは美肌を作るとも言われ、入眠後の最初の熟睡段階に分泌されます。この意味で睡眠時間よりも熟睡することが大事で、食事は寝る4時間前までには取っておく、お酒やカフェイン入り飲料は夜遅くには取らない、明るすぎない部屋で寝ることが良いでしょう。また、自分にとって心地よい環境を作り上げることも大事です。ストレスは自律神経のバランスを崩し、血中のビタミンCの量を減らすと考えられています。
 まだまだ老化防止のための明確なエビデンスを得るには研究途上との感を拭えませんが、元気で長生きのためには、食事は栄養のバランスを考えて腹八分目、規則正しい生活と適度な運動を心掛け、ストレスのない自分にとって快い環境の中で過ごしながら十分な睡眠をとるということになるのでしょうか。 「アンチエイジング検査」
現在私の勤務している医療グループでは一般の検診コースとは別にアンチエイジングコースと銘打って、以下に示すアンチエイジングに関する検査を実施しております。一度受けてみたいと思われる人がいらっしゃいましたら、海老名メディカルサポートクリニック、ヘルスサポートセンター、TEL046-292-1311(直通)に直接相談頂くか、ホームページ予約 http://kenshin.jinai.jp/をご覧下さい。

 血液老化度   遊離脂肪酸、アディポネクチン、フィブリノゲン、総ホモシステイン、リポ蛋白(a)、シスタチンC
 抗酸化力   ビタミンA,C,E、葉酸
 ホルモンバランス   DHEA-s、フリーテストステロン(男性ホルモン)、エストラジオール(女性ホルモン)
 免疫バランス   NK細胞
 一般検査   マグネシウム、フェリチン
 体の構成   体成分分析測定、骨密度測定
 動脈硬化度   頸動脈超音波、血圧脈波


 1年半にわたって「元気で長生き講座」を執筆させて頂きました。私自身も多くの資料を参照しながら、お話を頂くまでは漠然としていた知識が原稿を執筆する度に明瞭になってきたように感じています。私も聖人君子ではなくややもすれば安きに流れて原稿の中で紹介させて頂いた項目の半分も実践できておりません。皆様から大橋は立派なことを書いていたが結局は寝たきりになってしまったと言われないよう、精進していきたいと思います。結びに、ご愛読頂いた皆様方の元気で長生きを祈念し、筆を置かせて頂きます。


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大橋 幸一郎 先生