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演題:「航空自衛隊の現状について」
                     航空幕僚長 丸茂 吉成空将

 昨年12月20日付で第35代航空幕僚長を拝命しました丸茂です。
 我が国を取り巻く安全保障環境が戦後最も厳しいと言われる中、航空自衛隊(以下「空自」)は、いかなる事態にも対応できるよう万全を期し、対領空侵犯措置をはじめとする各種任務を着実に遂行してきたところです。
 今後も、わが国の平和と安全を守り、国民の皆様の負託に応えるためにも、国内外の情勢、時代の変化に柔軟に適応し、各種事態に対応できるよう、空自の精強化に努めていきたいと考えております。今後とも、ご理解とご協力をお願い申し上げます。
 本日は、皆様を前にお話をさせて頂く機会を頂き感謝申し上げます。















 「つばさ会」からは昭和40年の発足以来、長きにわたり空自を側面から支えて頂いており、防大18期・第30代航空幕僚長の外薗健一朗会長を筆頭とする約2300名の会員の皆様の相互親睦の上に、空自に対する協力・支援、航空防衛力基盤の発展に資する調査・研究と提言、殉職隊員の慰霊顕彰及び遺族援護の協力、美術展の実施等、活発に活動して頂いております。
 中でも、昨年10月17日に発生したUH-60Jの事故に伴い、去る1月30日に浜松基地において執り行われました葬送式において、つばさ会の皆様からは会長名による弔電及び供花を頂くとともに、浜松つばさ会会長の飯塚様をはじめ、諸先輩方のご臨席を賜りました。
 「つばさ会」が常に空自に寄り添い、その節目において、我々現役隊員と共に喜び、そして悲しみを分かち合って下さることについて、空自を代表しまして、改めて深甚なる敬意と感謝の意を表したいと思います。
 なお、一昨年の4月6日に発生しましたU-125の事故について、思い起こされる方も多いと思います。現在の状況は、平成11年から12年、5件の航空大事故により13名の命が失われた時期以来の危機的状況にあると考えています。
 この危機的状況を打開すべく、先月23日、臨時に「空自安全の日」を設定し、安全意識の高揚に努めました。現在、空自全隊員が、事故の連鎖の防止、また、事故の絶無に向けて決意を新たにしているということを、ここでご紹介させて頂きます。
 翻って、平成29年度は、春の叙勲にあたり瑞宝中綬章を授与されました防大14期・元技術研究本部技術開発官の長谷莞(ながや かん)様を筆頭に春秋合わせて41名の先輩方が、また、危険業務従事者叙勲には360名の先輩方がそれぞれ叙勲の栄に浴されましたことをここでご紹介させて頂きます。誠におめでとうございます。
 それでは、最近の主要な出来事に触れた後に情勢認識や防衛力整備等についてお話をさせて頂きます。
 航空幕僚長就任後、私は指導方針として「真に機能する航空自衛隊」を掲げ、その達成にあたり「常在戦場の心構え」「各種事態への対処及び能力の向上」「現場力の向上」の3つを各部隊等に要望してきたところです。
 そして、主として厳しい環境のもとで勤務する隊員の処遇を向上させていきたいとの考えのもと、車力、加茂、秋田及び白山等の部隊を視察しました。車力、加茂、秋田では、冬の東北地方の厳しい環境を直に体験してきましたが、厳しい風雪に耐えつつも、溌剌として職務に取り組む隊員の姿を目の当たりにすることができ、大変心強く感じたところです。
 また、装備の導入に関する大きな節目として、Fー35Aの三沢基地配備が開始されました。本年1月26日、三沢基地に国内組み立て第2号機となる機体を受け入れ、翌2月24日には、防衛大臣や多くのご来賓に出席頂き配備記念式典が実施されました。















         F-35A(航空自衛隊HPより転載)
 今後は、所要の試験及び教育を実施しつつ、平成30年度中には三沢基地に10機を配備し、部隊改編も併せて実施する予定です。また、平成31年度から平成34年度までに、毎年6機のFー35Aを、順次、三沢基地に配備していく予定です。
 F-35Aは、高いステルス性を有するなど、最先端の戦闘機であり、近年、周辺国が戦闘機をはじめとする航空戦力の近代化や増強を急速に進める中、こうした優れた能力を持つF-35Aを配備することは、我が国の安全保障上、極めて大きな意義があるものと考えます。
 また、同盟国たる米国に加え、豪州や英国などもF-35Aの導入を進めており、相互運用能力の強化の点からも、大変有意義であると考えます
 また、昨年3月以降、美保基地所在の第3輸送航空隊へ、C-2輸送機の配備を逐次実施しており、現在、5機の配備を完了しております。
同基地では空輸に係る運用試験前段が本年1月末に終了し、国内外における空輸任務を開始しています。初の空輸任務は、厚生労働省が実施している硫黄島戦没者遺骨収集に係る遺骨収集団員の空輸支援でした。
 また、先日24日には、岩国基地から羽田空港まで海上保安庁卒業式、海自江田島基地視察に伴う内閣総理大臣空輸を実施しました。その際は総理から、C-2に対するお褒めの言葉を頂きました。
















        C-2(航空自衛隊HPより転載)
 なお、国外運航では、これまで中東、オセアニア、米国方面等へ、4回の運用試験を実施しており、C-2の高い運航能力を国内外に示しております。今後、C-2の配備を更に進めるとともに戦技に係る運用試験後段を完了させ、最終的な運用態勢の確立に尽力して参ります。
 次に訓練ですが、本年2月、空自は、日米豪共同訓練「コープ・ノース・グアム」を実施しました。本訓練では、空自として初めてLJDAMの実弾を投下し、救難機・輸送機を参加させるとともに、並行して実施されたHA/DR(人道支援・災害救援)でも訓練内容を一層充実させました。
 平成30年には、日豪防衛相会談での合意に基づいて日本国内における戦闘機による日豪共同訓練「武士道・ガーディアン 18」を実施する予定でありますが、これは一昨年度10月、英国空軍のタイフーン戦闘機4機が参加した演習「ガーディアン・ノース」に次ぐものです。
 また、空自の戦闘機部隊は、日米共同対処能力及び部隊の戦術技量の向上を図るため、積極的に米海軍部隊及び米空軍戦略爆撃機部隊との共同訓練を実施しております。
 近年、日米の関係は、まさに今年1月22日に実施された安倍総理の施政方針演説にあるとおり、「互いに助け合う同盟は、その絆を強く」し、「日米同盟は、間違いなく、かつてないほど強固なものとなっている」という関係にあると感じております。
 訓練・演習については部隊レベルのみではなくハイレベルにおいても継続して実施しております。本年1月には主要部隊の指揮官を対象に、2月には航空方面隊の副司令官を対象に、図上演習を実施して、対処能力の向上及び認識の統一を図ったところです。
 防衛協力・交流におけるハイレベル交流についても、着実に進めております。私が航空幕僚長に就任した翌日、ゴールドフィン米空軍参謀総長、オショーネシー米太平洋空軍司令官、マルティネス在日米軍兼第5空軍司令官と電話懇談を実施し、引き続き日米空軍種間での緊密な連携をしつつ、インド太平洋地域の平和と安定に寄与していくことを相互に確認しました。 また、本年1月31日にはウィルソン米空軍長官が防衛省を訪問されました。
 その際、米空軍長官とは、地域情勢、防衛力整備、日米防衛協力等について幅広く意見交換を行うとともに、地域の平和と安定のため、空軍種間で緊密に連携していくことを確認し合いました。
 そして本年2月には、シンガポール共和国空軍司令官タン少将の招待に応じ、シンガポール・エア・ショー参加のため、航空幕僚長就任後、初めてとなる国外出張を行いました。また、その機会を活用し、シンガポール空軍司令官をはじめ、米空軍参謀総長等、参加各国の空軍司令官等との意見交換を行い、相互理解を深め、信頼関係を構築することができました。
 また、要人の来訪では、本年2月7日にペンス米副大統領が市ヶ谷基地を訪問し、第1高射群隷下のPACー3部隊を視察されました。その際ペンス米副大統領は、「米国は日本と共にあります。」と部隊を激励されるとともに、現場の隊員一人一人と堅い握手を交わされました。
 男女共同参画についても着実に実施しております。その一例として、女性戦闘機操縦者養成の現状について、紹介させて頂きます。
 現在、女性自衛官の戦闘機等への配置制限が平成27年11月に解除されて以降、女性戦闘機操縦者の養成を進めております。昨年12月末には、一人目の女性操縦者がF-15で初フライトを実施しており、早ければ、本年8月には、空自初の女性戦闘機操縦者が誕生する予定です。なお、現在、2名がT-4の課程で訓練を実施しており、加えてT-7の課程では戦闘機操縦を希望する2名が訓練を実施しております。
 次に、わが国を取り巻く情勢についてお話させて頂きます。
 北朝鮮については、2011年12月に金正日総書記が死去し2012年に金正恩体制に移行した後、核・弾道ミサイル開発が急速に進展し、米本土に到達する可能性があるものを含め、様々な種類の弾道ミサイルを多数発射しています。
 2014年以降は毎年弾道ミサイルを発射、特に2016年23発、2017年17発の発射が確認されており、弾道ミサイルの性能向上と運用能力の向上を図っております。
 また、核実験は2006年10月から計6回に上り、昨年9月には、国連安保理決議に反して第6回目の核実験を強行しました。なお、核爆発の規模は、これまでで最も大きい160キロトンと推定されており、水爆であった可能性も否定できません。また、保有している核兵器は、通常6回の核実験を通じた技術的成熟などを踏まえれば、小型化・弾頭化に至っている可能性があります。
 次に中国ですが、2012年11月からの習近平体制以降、大規模な軍改革による統合運用の強化や、軍事予算増加傾向が継続しています。
空母の就役や進水、また、爆撃機等の長距離進出飛行等、近年、我が国南西諸島と重なる“第一列島線”以遠への戦力投射能力充実を目指す姿勢が顕著となっています。東シナ海では、尖閣諸島周辺を含め、艦艇及び航空機の活動を活発化させていることに加え、公船を活用して、尖閣諸島に対する我が国の施政権と相容れない活動を継続しています。また、独立志向と見られる台湾の蔡政権に対しては、強硬姿勢を示しております。
 他方、南シナ海では、仲裁裁判所による仲裁判断を無視して力による現状変更を継続し、東南アジア諸国を含む国際社会から強い懸念が示されております。
 最後にロシアは、2015年末に承認された「国家安全保障戦略」において、多極化しつつある世界で、ロシアの役割はますます増大しているとの認識を示す一方、NATO拡大を脅威と捉えているほか、米国の弾道ミサイル防衛システムの欧米やアジア太平洋地域への配置は国際社会を不安定化させる動きであるとして、警戒を強めております。
 極東地域では、新型のSu-35戦闘機等の配備を進展させるとともに、わが国への接近を伴う爆撃機や哨戒機等による長距離飛行も継続しております。北方領土では、択捉島及び国後島における軍事施設地区の整備を進めているほか、地対艦ミサイル配備を発表しており、その背景には戦略原潜の活動領域であるオホーツク海に接する軍事的重要性が高まっていること等が存在するとの指摘もあります。
 また、最近の動向としては本年2月、ロシア政府が択捉島の民間空港を軍民共用化する政令を出したほか、3月下旬には、ハバロフスク地方の基地に所属するSu-35戦闘機2機が、択捉島の空港を拠点に迎撃訓練を行ったと報道されています。
 続いて、対領空侵犯措置の実施状況について説明します。
 29年度の3四半期までの緊急発進回数は736回となっております。今年度は、前年度同時期の883回に比べ147回減少しました。このうち、中国機に対する緊急発進回数は395回で、前年度同時期と比べ249回減少、ロシア機に対しては328回であり97回増加しています。
 推定も含め、中国機の中では戦闘機、ロシア機の中では情報収集機に対して多くの緊急発進を実施しました。29年度における特異な事例としては、5月に中国の小型無人機らしき物体による尖閣諸島領空侵犯のほか、8月には中国のH-6爆撃機による紀伊半島沖までの飛行があり、12月には中国の戦闘機が対馬海峡を通過し日本海へと進出するのを初めて確認しました。
 また、今年に入り、2月20日にはロシア爆撃機が北海道から太平洋を南下して大東諸島まで長距離を飛行し、2月27日には中国の情報収集機が対馬近傍を飛行するとともに、ロシアの戦術偵察機が日本海を飛行しております。
 このほか、空自は、平素から捜索救助、患者空輸等、様々な災害派遣を実施しております。
 平成29年度の主な活動例としては、昨年5月、岩手県釜石市の山林火災において、回転翼機による空中消火を、昨年7月の九州北部豪雨においては、救難機及び地上部隊による孤立者救助、人員・物資の輸送及び給食・給水支援活動を実施し、本年1月の佐渡市・輪島市における断水等においては、水タンク車、水トレーラーによる給水支援を実施しております。
 また、本年2月、小川原湖に米軍F-16が外装タンクを投棄した事案を受け、自治体からの要請により、海上自衛隊とともに燃料等の回収に係る災害派遣を実施しました。
 続いて、空自の防衛力整備の状況について説明します。
 平成29年度は、国家安全保障戦略及び25大綱の下、26中期防に基づく第4年度目として、統合機動防衛力の構築に向けた防衛力整備の完整を目標に、防衛力整備を実施して参りました。
 主要事業としては、航空優勢の獲得・維持として、F-35Aの取得及びF-2戦闘機の能力向上・改修を実施するとともに、各種作戦を持続的に遂行し得るよう、KCー46Aを取得しました。















         F-2(航空自衛隊HPより転載)
 また、常続監視体制の整備として、滞空型無人機を取得し、広域における常続監視能力を強化するとともに、周辺空域における安全確保として、現有のE-767早期警戒管制機の警戒監視能力の向上を実施しております。
 更に、迅速な展開・対処能力の向上のためCー2を取得するとともに、南西地域における防空態勢の充実のため、昨年7月には南西航空混成団を廃止し、南西航空方面隊を新編しました。また、冒頭で申し述べたとおり、三沢基地におけるF-35Aの初号機配備に伴い、臨時F-35A飛行隊を新設しております。
 平成30年度は、26中期防の最終年度として、昨年度に引き続き、F-35A、C-2の取得及びE-767早期警戒管制機の警戒監視能力の向上を実施するとともに、南西地域をはじめとする周辺空域の警戒監視能力の強化のため、E-2Dを取得します。
 また、F-4EJ改の減勢に対応すべく、第302飛行隊を百里基地から三沢基地に移動させ、第3航空団において当該飛行隊のF-35Aへの機種更新を実施します。これに加え、「スタンド・オフ・ミサイルの導入」として、F-35Aに搭載するスタンド・オフ・ミサイル、JSM(ジェイ・エス・エム)の取得及び、F-15等、空自戦闘機へのスタンド・オフ・ミサイル、LRASM(ロラズム)/JASSM(ジャズム)の搭載に必要な機体改修を行うための適合性調査の実施を予算に盛り込んでおります。
 これらの「スタンド・オフ・ミサイル」は相手の脅威の範囲外から対処できることから、その導入が自衛隊員の安全を確保しつつ我が国の防衛に万全を期すために必要な装備であると考えております。なお、昨今の北朝鮮の弾道ミサイル発射事案等に鑑み、最大限早期に事業を推進するとの観点から、30年度概算要求事業であった、PAC-3MSEミサイルの取得、固定式警戒管制レーダー(FPS-7)の換装、自動警戒管制システムの能力向上等が、29年度補正予算に計上されました。
 次に、訓練・演習について説明します。航空自衛隊は、例年、日米共同統合演習に参加し米軍との共同対処能力、相互運用性及び即応性を維持向上するとともに、自衛隊統合演習等への参加を通じて自衛隊の統合運用について検証・演練し能力を向上させているほか、国外においても、冒頭で説明しましたコープ・ノース・グアム、米国アラスカ州におけるレッド・フラッグ・アラスカ、コブラ・ゴールドといった多国間共同訓練等の演習及び訓練に参加し、より実戦に近い環境下における訓練により作戦遂行能力を向上させています。
 また、救難部隊は日米共同救難訓練(コープエンジェル)の実施により、日米相互の理解深化及び日米共同による捜索救難能力を向上させています。
 そのほかの訓練として、高射部隊については、米国(ニューメキシコ州マクレガー射場)において実弾射撃を実施するとともに、29年6月以降、戦術技量向上のためPAC-3部隊による空自基地及び陸自駐屯地、更には在日米軍基地等への機動展開訓練を実施し、いかなる事態にも国民の生命・財産を守るべく万全の態勢をとるとの観点から、函館、市ヶ谷、出雲、海田市、松山、高知の各駐屯地に高射部隊を展開させ、所要の態勢をとっています。
在外邦人等保護措置訓練について国外では、ジブチ共和国等へKC-767を派遣し、国外運航・活動能力を向上させ、日米の連携を強化しており、国内ではC-130Hを使用した訓練を行い、関係機関を含めた連携の強化を図っています。
 また、実任務として、国連南スーダン・ミッションにおける施設部隊の撤収及び、海賊対処活動に係る物資等空輸を実施しております。加えて、29年9月における北朝鮮の核実験に伴い、放射能特別調査としてT-4による大気浮遊塵の収集、C-130Hによる希ガス収集及び試料の輸送を実施しています。
 なお、国賓等の輸送としまして、本日までに335回の要人空輸等の任務運航を実施しております。次期特別輸送機につきましては、本年8月に第1号機を領収後、国外運航訓練及び運用態勢点検を経て、31年度当初から任務運航を予定しております。
 また、防衛協力・交流についても、積極的に実施しております。ここでは、時間の関係上、現場の部隊レベルにおける部隊間交流の実施状況について紹介します。昨年度は、UAE、イギリス、カナダ、ブルネイ、タイ、シンガポール、ニュージーランド、及びオーストラリア空軍との部隊間交流を実施しております。
 なお、昨年9月、空自の第404飛行隊とオーストラリア空軍の第33飛行隊が、姉妹飛行隊、通称、シスター・スコードロンの関係締結について合意しました。また、昨年12月には、2013年に姉妹飛行隊の関係を締結した空自の第201飛行隊の隊員が、イギリス空軍第3飛行隊を訪問し、部隊間交流を実施しました。今後も様々な機会を通じて、各国との関係強化を図っていく所存です。
 次に、人事関連施策についてお話をしたいと思います。
 まず、厳しい募集環境の現状と対応状況ですが、少子化に伴う募集対象人口の減少、景気回復に起因する有効求人倍率上昇等を受け、自衛官募集種目の志願者は減少が継続している状況にあり、平成29年3月及び8月の自衛官候補生採用においては前年度に引き続いて、採用計画数を大幅に割り込む結果となっております。
 募集対象人口は、ピークであった平成6年と比べると約4割減少しており、更に、遠い将来に目を転じますと、約50年後には募集対象人口が現在の半数近くにまで減少することが予想とされております。これらの状況を踏まえ、空幕長通達により地本への支援要員の差出し、募集広報及び隊員自主募集の活性化を指示し、更なる募集支援の強化を図っているところではありますが、つばさ会の皆様におかれましては、隊員の募集や航空自衛隊の一般の方々への紹介等につきまして、引き続きご協力を頂ければと思います。
 また、航空自衛隊は、少子高学歴化に伴うこのような厳しい募集環境の下、将来にわたって質の高い人材の安定的確保及び効果的活用が精強性向上のために不可欠であるとの認識に立ち、男女共同参画に係る施策を推進しているところです。一例としましては、指揮系統以外において後輩隊員が先輩隊員から助言を受ける「メンター制度」を試行的に導入し、特に女性隊員の定着率向上を図るとともに、後進育成の気風を醸成し、帰属意識高揚による団結力強化等、女性隊員の活躍推進のための取組を実施しているところです。
 また、28年度から作成している「男女共同参画推進等ハンドブック」と、女性隊員の募集促進を企図した「女性自衛官活躍紹介パンフレット」は、29年度も引き続き更新を図り、後者は新たに「女性隊員活躍紹介パンフレット」として全国の募集広報にも活用しているところです。つばさ会の皆様におかれましても、広く話題として頂けますと幸甚です。















 最後に、新たな領域に係る取組として宇宙状況監視について説明します。
 宇宙空間については、昨今、安全保障上の重要性が著しく増大している 一方、宇宙ゴミの増加や対衛星兵器の開発の動きを始めとして、持続的かつ安定的な利用を妨げるリスクが顕在化しています。宇宙空間の利用を進めていく上で、その安定確保は必須であるとの認識の下、航空自衛隊は、省全体、あるいは政府一体となって宇宙状況監視体制の構築を進めています。
 宇宙基本計画や省内での検討に基づき、宇宙状況監視のための運用システムとレーダーを整備するとともに、JAXAや米軍と適時に情報を共有することにより、我が国の宇宙状況監視の一元的な運用を実施することとしています。Deep Spaceは防衛省が新たに整備するレーダーとJAXAの光学望遠鏡により、また、Near EarthはJAXAのレーダーにより監視します。また、省内検討の結果、本システムを運用する部隊は、空自の部隊として新設することとなっています。
 私からのお話は以上となりますが、最後に、我々現役隊員に寄り添い、支えて頂いているつばさ会の皆様のご厚情に対しまして、重ねて御礼申し上げますとともに、引き続きご指導を賜りますようお願い申し上げ、結びの言葉としたいと思います。
 ご清聴ありがとうございました。