19年3月中旬の記事





3月20日

 米国の北朝鮮に対する金融制裁は米国の全面譲歩で決着しました。改めて核の実力を思う次第です。この交渉を観察している幾つかの非核保有国は、核の実力を確認し、自分たちも核開発に努めれば、相応の報酬が得られることに自信を深めたことでしょう。

 たった 2,500万ドルの凍結解除で、ヨンビョンの核施設の稼働を止め、今後の核廃棄への展望を開いたのは成功と米国が考えたのなら、これは大間違いでしょう。米国が失ったのはモラルです。偽ドル、麻薬などの犯罪によって得た金のマネーロンダリングに関わった口座だと断定していたものを、人道支援に使うならという、如何にも白々しい口実をもって解除しては、経済制裁を始めた理由が失われました。そもそも、経済制裁は六カ国協議とは関係ないこと、それを協議再開の条件にした北朝鮮の理屈は通らないのですが、それにも屈伏したのです。

 これから先は、米国の言うことは信頼できないという不信感が同盟国の間に広がることを恐れます。日本にしても拉致問題の梯子をいつ外されるか、政府の最大の懸念と思います。何しろ頭越し外交、梯子外し外交は得意中の得意である過去を持っているのです。



3月16日
 米財務省は、北朝鮮による資金洗浄を幇助したとしてマカオの銀行「バンコ・デルタ・アジア」 (BDA)を米金融機関との取引禁止を正式に決定しました。この決定で BDAは決定的な損害を受けることは明らかですが、北朝鮮の口座にある預金については取り扱いは不透明です。産経は「北が笑うのは早すぎる」という社説を書き、朝日、読売もニュアンスの違いはありますが、北朝鮮の対応がこれからの問題だという認識では一致しているようです。

 そもそも金融制裁で凍結されている金額は、 2,500万ドルだと言われています。日本円でたったの29億円です。北朝鮮という国家が眦を決して凍結解除を迫るレベルでの話ではなさそうですが、北にとっては大金なのでしょう。その辺りが何か不透明で、隠されたものがあるのかも知れません。

 IAEAのエルバラダイ氏を北朝鮮は招待し、査察などの調整に入る姿勢を示したと受け取れましたが、実際には様々な条件を出してIAEAの介入を妨げようとしています。その理由が、金融制裁が全面解除されなければ、協力できないということだそうですから、国家レベルとしてははした金の筈の金額に拘っているのです。

 六カ国協議で当初の支援として5万トンの重油を韓国が支援することになっています。この金額が約20億円弱、大型タンカーの底に溜まっている程度の油です。北の状況には憐れをもよおします。



3月15日
 今朝の産経の記事、「遅すぎる首相訪米」に同感しました。安倍首相は就任直後に訪中、訪韓により対アジア外交に一定の成果を挙げましたが、その後の訪問国に米国は入らず、既に半年が過ぎました。日本にとって日米関係は最も大切なもの、小泉前首相は日米関係こそが日本外交の機軸であり、それがあれば他の国との関係も良好に保つことができると言っていました。

 昨年秋の米中間選挙で共和党は負け、ブッシュ政権は劇的というべき政策転換を行いました。その中には六カ国協議を通じての対北朝鮮政策も含まれています。北朝鮮をテロ国家から外す作業は開始され、金融制裁は徐々に解かれつつあります。金融制裁の全部を解かなければ、核施設の停止・封印も全部は行わないと北朝鮮の金次官は恫喝しています。米国はこれに反論もせず、制裁のかなりの部分を解除するとのこと、これでは拉致問題も棚上げになりそうです。

 イラク問題などで苦境にあるブッシュ政権を励まし、信頼関係を築くことこそ今必要なこと、半年も放っておいては不快感を持たれても仕方ありません。この隙を北朝鮮も中国も見逃す筈は無いでしょう。

 ホンダ議員の資金源が中国系にあることが産経の取材で明らかになりつつあります。経歴から見て、ホンダ議員が人権派であり、反日が目的ではないと当初は思っていましたが、本人の思惑はともかく、その動きは日米離間に働いていることは明らかです。こんなところにも安倍訪米が遅れていることの損失が現れているように思われます。



3月14日
 松岡農水相の事務所費疑惑、法に定められたもの以外は出す必要がないとの説明で切り抜けようとしていますが、何とも頂けない話です。また、松岡氏を擁護する安倍首相の態度も不可解、これでは支持率が低下するのは当然のことです。安倍内閣発足時に持った期待は外れかけています。

 明日は確定申告の最終日、高額な医療費を支払った人は医療費控除の申告が出来ますが、それには病院の領収書が必要です。病院に行く度に領収書を丁寧に保管し、それを添付して申告しなければ控除が受けられません。国民にはこの面倒な作業を忘れずに行うことを政治家は法律を成立させることで要求しているのです。

 議員会館の光熱水費は国民が税金で支払っているのに、それを事務所経費に含めるとは、明らかなウソです。この領収書を出せないのは当然のこと、出せば虚言だということがばれます。国民への要求の厳格さと、政治家の経費計算のあやしさには国民の怒りを買うに十分なものがあります。

 法に定めがあろうが無かろうが、国民への説明が必要と思えばやれば良いこと、 TBSラジオに投句された川柳に

「還元水じゃんじゃん飲んで全部吐け」

というのがありました。国民は怒り心頭です。1本5千円などという還元水を購入したからなどという言い訳が通用しないことが分からない松岡氏ではないでしょうが、眼が見えなくなっているのでしょう。



3月13日
 元駐米大使、現天皇の相談役である栗山尚一氏が外務次官当時に外交フォーラム誌に掲載した論文の一節に「先進民主主義国家の主要な一員となった日本の外交は、これまでのような国際秩序を与件とする受け身の外交では世界に通用しなくなっている。」「受け身の外交から能動的な外交に転換する上で心がけなくてはならないのは、日本の特殊事情を対外的に訴えることをできるだけ控えることである。」とあります。

 この主張は湾岸戦争に際しての日本の対応について憲法第9条を念頭に置いたものですが、今でも日本の特殊事情をもって相手国に訴え、状況を斟酌して貰おうという態度に変化はないように見えます。自衛隊の国際貢献への制約、米国産牛肉の年齢制限などはその多くの中の一例に過ぎません。

 視野を広くすれば、靖国、慰安婦なども日本の特殊事情の範疇に入るでしょう。多くの日本人にとってこれらの問題は心の痛みを伴い、かつ外国からとやかく言われたくないことでもあります。また、何か言われれば反発したくなる事でもあります。

 中国が大国意識をひけらかす一方で、都合が悪いくなると開発途上国であることを口実にするというような、言わば中国の特殊事情を訴えるやり方には不快感を覚えますが、外国から日本を見た場合も同じ事です。まして経済大国と言われ、自らもそう自認しているのですから、それに相応しい行動が必要です。

 慰安婦問題など、受け身になればなるほど状況は悪化します。北朝鮮流にやるなら、既に解決済の問題であると首相が世界に発信すれば良い事、いたずらに弁明してもそれが増幅されて返って来るだけなのです。



3月11日
 議員立法で宇宙基本法を今国会に提出する動きがあります。高性能の偵察衛星など宇宙の防衛利用を可能にするものとのことです。かつて国会決議で宇宙は平和利用に限るとして軍事的な利用は行わない制約を課しましたが、今やこの制約によって防衛面は大きなハンディキャップを負っています。

 解像度1mという程度の写真では、 google earth の映像とさして変わりはありません。あるいは人を確認できるgoogleの方が解像度は良好かも知れません。勿論撮影間隔や撮影場所をある程度自由に設定できる偵察衛星の利点はありますが、技術的にもっと高度な映像が得られるのに、それをしないという制約は不合理なものです。

 国際法上の義務ではないものを自らの意思で一方的に自国に課してきた国会決議は、この決議後の宇宙利用の進歩によって極めて日本の防衛に不利な状況を作り出していると言えます。偵察のみならず、通信、気象、 GPS、早期警戒など軍事的な利用は多岐にわたり、今や先進国の軍事から宇宙を取り除いたら機能不全に陥ることになります。

 朝日の記事によれば、防衛省は宇宙利用の推進には消極的だとのこと、理由の一つは民間衛星の利用でなんとかなっていること、もう一つは、宇宙利用のための予算を計上すると限られた防衛予算の中でやり繰りがつかなくなるとのことだそうです。ミサイル防衛、海外活動等々、自衛隊に任務は次々と広がるにも関わらず、防衛予算は切り詰められ、手元不如意で手を広げられないようです。情けないというしかありませんが、法的な制約を取り除いておく程度のことはやっても良いではありませんか。




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