19年9月下旬の記事



9月30日
 今日の産経の記事「やばいぞ日本」に韓国の仮想敵国は日本だと書かれています。冷戦時代には、韓国の仮想でない現実の敵は北朝鮮で、韓国人は誰もそれを不思議とは思っていませんでしたが、世の中は変わるものです。冷戦当時の韓国軍との交流などで、彼らの思考は北向きばかりで、馬車馬が目隠しされているような物の見方だと感じていました。ところが、目隠しを外される状況が来ると今度は焦点が定まらないように見えます。

 盧武鉉政権は北朝鮮の脅威に自ら目隠しをし、北の核は韓国に向けられることはないと言っています。冷静に考えれば、北朝鮮が核を持つ最大の理由は、核をもって日本を脅迫し、或いは攻撃することでは一つのオプションではありますが最終的な目的ではありません。それは韓国との競争に勝ち、北主導で半島を統一することにあります。しかし、そのことを言う人は誰もいません。

 盧武鉉大統領が来月2日から訪朝し、金正日と首脳会談を行います。次回の南北首脳会談は金正日が来韓する約束になっていたのを省いての訪朝ですから、朝貢のための訪問と見てもおかしくありません。韓国内には、盧武鉉大統領が北支援の約束手形を乱発して帰るのではないかという懸念の声が上がっています。北の核保有宣言が陰に陽に効いているのです。

 孟子のことばに「五十歩をもって百歩を笑う」があります。わが国の国防の現状は実は韓国を笑うどころか、韓国から笑われるところもあるのが実態ではないでしょうか。竹島はその一つで、韓国は竹島を戦利品として最大限に利用し、海洋権益の確保と国民の士気の鼓舞に使っています。



9月29日
 ミャンマーでは遂に日本人記者が殺害される事態となりました。何十年も軍による圧政が続き、国際社会の非難を受け、かつ西側諸国の経済制裁を受けて来たミャンマーですが、国際社会の非難に対して蛙の面に水の反応しか示さず、独裁を続けているのは北朝鮮と変わる所はありません。

 現軍事政権はビルマという国名をミャンマーに変え、首都をヤンゴンからネーピードーに移転させるなど異例の政策を続けています。西側のマスコミも国名については英のザ・タイムス紙と米のワシントン・ポスト紙はビルマと表記し、ニューヨークタイムス紙はミャンマーとしていますから、現政権に対する姿勢が如実に表れていると言えましょう。

 今回の流血事件について、ミャンマーに大きな支援を与え、協力関係を作っている中国に対する風当たりが強まっています。他にもダルフール等中国の関与が問題視されている国際関係がありますが、中国は問題を曖昧化させて自国の国益擁護はやめようとはしません。それに対し、日本を含めて西側諸国は強大化した中国に対し制裁など手段は何も取ることができません。

 日米などが中国に影響力行使を依頼しているのは、中国頼みしか手段が見つからないのが実情だからです。しかし、ミャンマーとの関係を強化して権益を確保しようとしている中国が、ミャンマーの現政権が嫌う西側社会が期待するような政策を取らせるのは到底無理な話です。

 アジア・アフリカに絶大な力を確保しつつある中国は、安保常任理事国でもある立場を利用し、自国の権益確保を目的として影響力を振るっています。この力が存在する限り、ミャンマーの民主化運動が鎮圧されるのは目に見えるようです。

 アウンサン廟における韓国大統領を狙った北朝鮮のテロ事件以来、北朝鮮とミャンマーの関係は断絶していましたが、今年に入って北朝鮮の武器が提供されるなど関係修復が進んでいます。独裁国家同志の連帯は、情勢不安定化のもとですが、中国にとって北朝鮮もミャンマーも連携を保ちたい国です。



9月28日
 海自補給艦による燃料補給がイラク作戦に使用されたのではないかという疑惑が問題となっていると各紙が伝えています。産経は「日本のNPO法人「ピースデポ」が、平成15年2月25日に海自補給艦が米補給艦に提供した約80万ガロンの燃料が、ペルシャ湾でのイラク監視活動に参加する米空母「キティホーク」に給油されたと指摘したことが焦点となっている」と伝えています。

 移動しながら作戦することが任務である海軍艦艇が、外国の船から給油を受けたことにより、その艦艇の作戦行動が制約を受けるはずもありませんから、本来このことを問題視するのはおかしいのです。それを法案の名称が 130文字にもなるテロ特措法というレトリックに満ちた法律によって実施していることに、そもそもの問題が内蔵されていたと言えましょう。

 安保・防衛関係の法律にはこの種のレトリックが使われるのが例となっています。古くは旧軍用語の差別、階級名称、部隊の名称等から始まり、武器使用、海外派遣の理由付け等々枚挙に暇がありません。このようなおかしなレトリックを駆使して自衛隊の任務が構築されているのですから、何時何処で破綻してもおかしくありません。

 イラク派遣部隊の指揮官達も現地で様々な苦労を嘗めましたが、その根源は軍として活動できない法的な制約にあったと言っても過言ではないでしょう。

 菅民主党代表代行は海自の給油活動について徹底的に情報の開示を求めると言っています。給油を受けた艦艇がどのような作戦行動を行っているかは日本政府が持っている情報ではありませんから、それは本来無理なことです。

 法律で出来ない相談の制約を課していることがこの問題の根源にありますから、天に唾するようなレトリックは排除し、給油する相手艦艇の作戦目的を確認するようなおかしなことはやらなくて済む様にしなければなりません。



9月27日
 福田内閣の支持率世論調査が出揃いました。朝日の53%を除いて何れも57%台と 5割を大幅に上回っています。何故朝日だけが低いのか、安倍内閣の時もそうでしたから、意図的に低い支持率を出しているのなら許せることではありません。また、調査結果を正直に出しているとすれば、調査方法に瑕疵があると見られても仕方ありません。

 産経の「やばいぞ日本」の記事は、日本のタンカーが多国籍軍に守られている実態を報道しており、秀逸です。このような記事が多く出されることで、海自の活動に対する理解が進みます。福田内閣に対する支持率の世論調査と同時に行われた調査によれば、インド洋における海自の活動に対し賛成が47%、反対が40%で賛成が反対を上回って来ました。

 国連によって感謝決議が採択されましたし、近く11ヶ国の駐日大使達が海自の活動継続を要請する声明を発表する運びとのこと、国際的にも活動継続への環境醸成ができつつあります。フィナンシャル・タイムズに武士道にもとると書かれては日本人たるもの、どう応えるのか。

 この件について民主党は見ざる聞かざるを決め込み、参院選勝利の美酒に酔っているとしか思えません。既に民意が離れたことに気付かなければ責任政党とはなり得ないでしょう。



9月26日
 社会時評、 5日間お休みしていましたが、その間に福田内閣が発足し政情は新たな段階を迎えました。新官房長官の町村氏が最初の記者会見で述べていた様に、新内閣にとって今国会の焦点はテロ特措法の延長問題です。

 これに反対する民主党の態度は固く、打開は容易ではありませんが、今の議論は同法を延長するにせよ、新法を提出するにせよ、方法論になってしまっていると思います。海自艦艇のインド洋における活動の意味について、もっと本質的な議論があって然るべきではないかと思料します。

 今月初旬、インド洋において米、印、濠、シンガポールの海上部隊が参加し、日本からは「おおなみ」「ゆうだち」の護衛艦2隻と、 P3Cが加わった本格的な海上戦闘の演習が行われました。中国封じ込めの一環という論評も出るなど、極めて意義の高い演習であったと思います。

 最近の情勢を分析すれば、インド洋に対する関係各国の意識の高まりは相当なものです。海上演習に加わった5ヶ国はもとより、中国はパキスタンに港湾を確保し緊急時には艦隊を滞在させるなどせめぎ合いは続いています。その一つの焦点が今回の演習であったと言えましょう。

 エネルギー資源をインド洋経由のシーレーンに依存している日本ですから、何としてもこの海域における存在感を示さなければなりません。Fleet in Beingと言う言葉がありますが、関係各国はインド洋におけるそれを確保しようと躍起になっているのが現状です。

 日本にとって、インド洋において艦隊の存在を確保することは本来他力本願では出来ない相談です。しかし、テロ特措法による派遣は各国の要請によって行われ、海自が大手を振って活動できる環境が出来上がっていることを忘れてはなりません。更には、今回の演習参加も、海自のこの活動があったからこそだと思います。

 国会においても、このような戦略的な議論がなされるべきだと思いますが、残念ながらまだその領域はタブーになっているようです。




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