20年4月上旬の記事





4月10日
  昨日行われた党首討論、面白かったと言っては両氏に失礼ですから、興味深く拝聴しましたと申し上げます。大連立という夢想から漸く決別した両氏、対立軸を明らかにしての論争でした。これまでの野党党首の質問に首相が答えるという形式を離れ、討議に近い論争が行われたことは良かったと言えましょう。

   討論の最後に小沢氏が取り上げたチベット問題に関する首相の見解を問う部分は、時間が切れる寸前のことで、首相の答弁も中途半端なものでした。しかし、福田氏のこの問題に関する考え方が示されていたように思われます。即ち、福田氏は中国首脳にはこの問題について直接もの申すことはしないということです。

   今朝の産経、桜井よし子氏の「福田首相に申す」が掲載されていますが、その最後部分に、「私は失望と憤りをこめて、一日も早い首相の辞任を望むものである。」と書かれています。「文明の危機に直面する深い哀しみを共有する日本であればこそ、首相は中国に、直ちに抗議しなければならない。」と言う桜井氏の直言です。

   しかし、福田氏が辞任したとしても、その後を継ぐ首相が中国首脳にもの申すことが出来るのか、民主党の小沢代表では駄目なことは先の小沢氏の訪中の言辞で分かっています。果たして桜井氏の望みを叶える人材は今の政治家諸氏のなかにいるのか、悲観せざるを得ません。


4月09日
  一昨日から昨日にかけての春の嵐には驚かされました。気象予報士としての私の眼で見ると、あのような特異な低気圧を見たのは初めてでした。皆雑はお気づきでしょうが、あの低気圧には前線がありませんでした。温帯低気圧は必ず温暖と寒冷の前線を伴っています。しかし、今回の低気圧はこれがなく、低気圧の中心に向かって等圧線が台風と同じような円形で、密度を濃くしていたのです。

   この低気圧は寒冷低気圧と言うとどこかのTVの気象解説者が言っていましたが、寒冷低気圧なる言葉は「気象の辞典」には載っていません。寒冷渦というのが本来の気象用語です。今回はこの寒冷渦が顕著に顕れたものと理解していますが、春先は日本海にしばしば寒冷渦が出現し、時ならぬ雪や霜害をもたらします。

   日本の政界、特に民主党には寒冷渦が渦巻いているようで、日銀人事問題でもブラックホールの如く周辺の反対意見を吸い込んで、倒閣へと突き進んでいます。

   欧州にもオリンピック聖火の周辺にチベットの人権擁護の渦が連鎖的に発生し、今日は米国にまで飛びそうです。今月末に聖火を迎える日本も、只では済みそうもないと戦々恐々です。

   米国発の経済不況が世界を覆い、石油も食料も工業材料もみな値上がり、不透明感が増しています。波瀾含みの、と言うより既に波瀾が大きな波動となって世界が揺れ始めたような気がします。


4月08日
  六カ国協議が停滞する中、米朝会談がシンガポールで行われます。北朝鮮の核計画の申告には多岐にわたる内容が含まれますが、今回の眼目の一つは核技術の拡散です。特にシリアに対する核技術支援を北朝鮮が認めるかに国際的な関心が集まっています。

   この2月、イスラエルのオルメルト首相が福田首相と会談した際、昨年9月にイスラエル軍が空爆したシリア国内の施設が、北朝鮮の技術支援を受けた建設中の核関連施設であるとの見方を伝えていました。一国の首相が首脳会談で語ったことの重要性は言う迄もありませんし、日本政府も相応の対応をしなければならないでしょう。

   米国など複数のメディアがこの件について北朝鮮に対する疑惑を報道していますし、イスラエル紙は米議会が詳細を今月末にも公表すると報じています。また、樺太沖の大韓航空撃墜事件の詳細なレポートで有名なセイモア・ハーシュ氏は「世界」5月号に関連記事を掲載しています。ハーシュ氏の情報機関などへの取材力は広く認められているところですから、この記事の信頼性は高いものがあります。

   これまでの北朝鮮の態度は、シリアに対する核支援などありえないとするものでしたが、これほどまで証拠が出揃ってくる気配ですと対応の道は狭くなるばかりです。或いはこの点が米国の狙いというか、カードなのかも知れません。

   六カ国協議が開始された5年前には、朝鮮半島の非核化が目的であり、その他の付属的目的はありませんでした。それが北朝鮮の資金問題、核技術拡散、ウラン濃縮など多くの問題へと分岐し、その間に北朝鮮が核実験を行うなどの紆余曲折があって、協議の本質が失われかけているように見えます。

   5年間の交渉の間に、北朝鮮は核実験により核保有国を自認し、米国、中国などを翻弄してきました。問題の多岐化は時間稼ぎにつながり、北朝鮮を利しています。六カ国協議の当初の目的はどこかへ吹っ飛び、関係国の中には北が今持っている核は認めようとする方向さへ出ています。

   六カ国協議を停滞させた一因は米韓関係の悪化にありました。李明博大統領により折角の保守復帰をしたのですから、速やかに米韓関係を回復し、北に厳しく当たることにより、六カ国協議が正常な状況に復帰できることを期待します。


4月07日
  米ロ首脳会談が行われ、新冷戦の回避が主要な論点となりました。新冷戦とは耳慣れない言葉ですが、旧冷戦が米ソ間の戦いであったのに対し、新冷戦が米ロ間の冷たい戦争を言うものです。日本でもこの言葉に関しては既に1年前に東京新聞が「新冷戦を憂慮する」という社説を書いていましたから、今誕生した新語ではありません。

   ロシアが経済力を付けるに従って米ロ間の軋轢が増し、特にMD配備問題ではロシアはMDがロシアのミサイルを標的にしたものだとして、抗議の姿勢を崩していません。NATOが配備を検討しているMD基地はポーランドとチェコだとのこと、こことNATO諸国を結び発射地点を推定しますと、その先はロシア南部から中央アジア諸国、イランなどが入ります。即ち、NATOが言うイランからのミサイルを迎撃することも出来れば、ロシアのミサイル迎撃もできるという地点ですから、ロシアの懸念も理解できます。

   一方でNATOが言うMDはロシアのミサイルを対象にしたものではないという説明も理解するに難しい話、現状ではMDの対象となるような核搭載可能なミサイルを持っているのはロシアだけなのですから。

   ブッシュ大統領は「問題は冷戦を過去のものにすることができるかどうかだ。」と述べましたから、両国関係は冷戦状態にあると米国の大統領は思っているのです。今回の首脳会談で、両国は「戦略的枠組み構築」で合意しましたが、これは言わば単なるフレームワークに過ぎません。首脳会談では何か成果を見せなければなりませんから、両首脳が最後の握手をして見せたのでしょう。


4月01日
  次期日銀総裁は武藤氏でOKと民主党の小沢代表は再三にわたって言ったと福田氏が暴露、大連合提案に続いての小沢氏の食言(注)でした。これでは福田氏が切れても仕方ありません。この件に関しては、3月20日の本欄で民主党の謀略ではないかと書きましたが、党首自身の食言でしたから何と言えばよろしいのか、責任ある党首発言ですから、福田氏としても小沢氏を信じてことを進める以外に道はありませんでした。  
(注:前に言ったことと違うことを言うこと)

   当の小沢代表はしれっとして「これまで変革できなかったことが参院で多数を取った事によって実現した」と述べています。総理を騙してまでやる汚さは許容できるものではありません。政治も地に落ちたものです。

   食言と言えば、チベット騒乱で中国政府首脳がこの問題の原因はダライ一派が起こしたものという発言も大いにその気配があります。ダライラマは、人民解放軍の兵士が僧侶に化けてことを起こしたと言明しましたが、衣を持った兵士たちの写真がネットで配信されています。その映像と、人民日報が配信した僧侶たちの暴行の映像を並べますと真相はおのずから分かろうというものです。我々も騙されてはいけません。

   今朝の産経の記事「カーブボール」は、ひとりのイラク人亡命者からの虚偽情報が、サダム・フセイン同国政権による大量破壊兵器保有の最も有力な根拠に浮上し、ブッシュ米政権のイラク戦争正当化の重要な一端を担ったテン末を書いています。これも米大統領がころりと騙された話です。

   日本では首相を野党党首が騙し、中国では国家主席が世界に偽情報を流し、米国では大統領が騙される、実に嘆かわしいことです。今日はエプリル・フール、騙し騙されもエスプリあってのこと、相手を陥れるようなことを国家のトップがやってはいけません。




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