平成21年1月中旬の記事




1月20日
中国では春節を迎えていますが、不況により農村からの出稼ぎ労働者(農民工)の多くが失職し、悲惨な状況に陥っていることが報道されています。産経は広州駅では、120万票の鉄道切符に帰郷しようとする1500万人が群がり、10人に1人も帰郷の切符が手に入らないことを伝えています。また、朝日はターミナル駅で帰郷しようとする農民工を強盗が襲い、出稼ぎでためたお金を強奪される事例が多発していると伝えています。

中国政府関係者は、この事態が「多くの失業者が最低限の衣食住すら不十分な状況に置かれ、不満は体制を揺るがせかねない危険域に達している。」と述べたとのこと、中国政府はこの事態にどう対処するか、苦慮している模様です。

産経は、「中国政府は思想・言論統制を強めている」と報じていますが、これは危機の実情をニュースにせず、暴動などに発展することを防止しようとしているのだと思われます。更に、「中国経済は先進国に先駆けて回復上昇する」と経済専門家の見通しを述べた記事を人民日報は掲載し、中国経済の将来は暗くないことを懸命にPRすることにより、不満を押さえ込む努力をしています。

一方、この状況を受けて軍部の一部など強硬派は、この事態は和諧社会や平和発展外交を唱えてきた政府の失政だとし、「平和を放棄し戦争に備えよう」「わが軍の使命は領土の辺境防衛から、海洋、宇宙、電磁空間などの国益の辺境を擁護することへ拡大した」などの論評が出ていると産経は伝えています。

胡錦濤政権にとって、社会不安の増大は今そこにある危機であり、軍部の主張はこれまでの政権が目指した方向を揺るがすものです。

米国発の金融危機が世界規模の経済危機を招き、中国においても体制を揺るがせ兼ねない危険域に入り、これが中国軍部などの強硬派の力を増したとするなら、この危機は東アジア諸国、取り分け日本に深刻な影響を及ぼすことになります。金融危機が経済問題に止まらず、軍事的緊張にまで発展するようなことがあれば、日本にとっては想定外のこと、米国に文句を言っても問題は解決しません。

来年度予算で防衛費はまたまた削減されます。今日本の周辺で戦火は燃え上がっていません。けれども、火種がばらまかれている状況を政治家たちは見て見ない振りをしているのでしょうか、いや、全く見えていないとしか思えません。


1月19日
イスラエルがガザに対する攻撃を一方的に停止し、ハマスも停戦すると宣言しました。双方が交渉してのことではなく、何れも一方的な宣言にしか過ぎません。

イスラエルの停戦宣言についてオルメルト首相は作戦目的を達成したからと演説しましたが、果たしてそうなのか、疑問符が付いています。イスラエルの思考は欧米と似ていますが、ハマス、ファタハなどのパレスチナ側の考え方はなかなか我々には理解できないところがあります。私どもが得る情報は西側のメディアを通じてのものが大部分ですから、情勢を精確に理解するには遠いと思わなければなりません。

イスラエルは作戦目的としたハマスの統治力、軍事力に打撃を与えたので、停戦するとしていますが、ハマスはイスラエルを停戦に追い込んだと言い、イスラエルの作戦は失敗したとしています。どちらが正しいのか、軽々に判断できることではありません。

国連の潘基文事務総長、英、仏、独、伊、トルコ、ヨルダンの首脳がエジプトに集まり収拾策を協議していますが、その中身はエジプトからガザへ通じるトンネルを通過する武器輸送を阻止することが主要議題、イスラエルがガザから撤収するための条件を満たすためのものです。ハマスにすれば痛し痒し、にわかに認めることは難しそうです。

イスラエルの過酷な攻撃は国際的な非難を浴びています。この攻撃でハマスの力を削ぐことは出来ましたが、壊滅させることは出来ませんでした。パレスチナの人たちがハマスに寄せる信頼を失墜させたのか、それともその逆なのか、イスラエルが攻撃を開始した当初の目的が奈辺のあったのかを知りたいところです。


1月18日
北朝鮮の朝鮮人民軍総参謀部報道官は昨日、韓国の李明博政権を非難する声明を発表し、「全面対決姿勢に突入することになるだろう。」と警告しました。この声明発表を受け、韓国軍の合同参謀本部は陸海空軍全軍に警戒態勢強化を指示したとのこと、軍事面でにわかに朝鮮半島情勢が緊迫して来ました。

北朝鮮軍の報道官は、西海(黄海)にある南北の境界線、北方限界線(NLL)付近で圧力を掛けると述べていますので、この海域での緊張が高まりそうです。

西海では、1999年に第一次西海海戦、2002年に第二次海戦が行われ、第一次では北朝鮮海軍が大きな損害を受けて退却しましたが、第二次海戦では韓国側の警備艇が撃沈され、戦死者も6名でたのに対し、北側は警備艇1隻が大破、死傷者も多数あった模様とのことでした。

韓国側は政治的には金大中、盧武鉉と親北政権が続き、この海戦で出た海軍軍人戦死者の追悼行事に政府の高官が出席しないなど、北を刺激しない政策を続けました。これが原因して、軍人たちの士気を粗相させましたが、李明博政権になり、漸く追悼式を政府主管に格上げすることになり、名誉が回復されたと戦死者の遺族たちは喜んだとのことです。

また、戦力不足が懸念された警備態勢も、対艦ミサイルと76mm砲を装備した440トン級の警備艇を新造し、運用を開始しています。

北朝鮮側はどうか、昨年数回にわたり対艦ミサイルの発射を西海側で実施し、韓国海軍に圧力を掛けています。今度西海で海戦が行われることがあるなら、これまでの銃撃戦と違いミサイルが飛び交う戦闘になる可能性が高いと予測されます。

北朝鮮が今の時点で何故このような警告をしたのか。明後日はオバマ新大統領の就任式が行われますから、北はこれまでと同じような政治的意味を込めての行動であることは間違いないでしょう。またも瀬戸際政策を取ったのです。米国における新政権発足を見越し、1年前からミサイル発射訓練を繰り返し、今回の対韓警告を行う準備をしてきたと見えるのです。

オバマ大統領は、就任の乾杯の暇も無く北の脅迫を受けることになりましたが、どのように対処するのか、クリントン新国務長官の姿勢と合わせ、北は見守っています。


1月17日
野沢温泉スキー場へ行ってきました。地元ではテレビ中継もある火祭りが15日夜に行われ、田舎の温泉町で日本の伝統が息づいているのに感心して来ました。

町を挙げての大きな行事に老若男女皆が参加し、火祭りのメインである大きな社殿を作る作業は危険を伴う大変なもの、老齢化の中で野沢ではまだその勢いがあるのです。

野沢でも数年来オーストラリアからの来訪者が多くなり、火祭りの見物人も半数ほどが外人ではないかと思われる状況です。オーストラリアからのスキー客はこれまでニセコへ行くのが定番になっていましたが、今は様変わり、日本のあちこちを梯子している人たちが多くなっています。

地元の人に聞きますと彼らは家族連れで来て長期間滞在するのだそうです。冬に来てもスキーが目的ではない人たちが結構多いとのこと、伝統的な日本文化に触れ、日本の田舎を楽しむためにやって来るらしいのです。食事も家族でそば屋に行くなど、驚かされます。野沢温泉もこの外人観光客の増加で息をついている様子です。

昨春、木曽路を歩きましたが、その時も民宿のような宿に泊まり、箸で日本食を食べている米国人の家族が複数いました。築地のマグロ競り市の見物ツアーが外国人に人気とか、日本人には思いつかない様なところが外国人に再発見されています。

それにしても、日本の若者達はスキーをやらなくなりました。リフトはガラガラ、広大な野沢温泉スキー場は2〜3万人入らないと混雑しているようには感じられないのだそうですが、圧雪してあるゲレンデの外のオフピステを楽しんでいるのが多くは外国人、ここでも楽しみを外国人に再発見されています。


1月12日
大分昔になりましたが、以前NHKがラジオでやっていた番組に「街頭録音」とい うものがありました。私にとって既に半世紀前の出来事になりましたが、群馬の田舎の成人の日の行事に藤倉アナウンサーが来て収録し、私も一言しゃべったことがありました。当時はまだ貧しい時代でしたが、今の様に閉塞感はなく、若者 には希望がありました。

調査会社マクロミルの最近の調査で、成人対象者に「日本の未来」についてどう考えているかを尋ねたところ、「暗いと思う」という回答は、47.3%と半数近くを占めました。この傾向は最近の経済危機などによるものかと思いましたところ、5年前の読売の調査でも青少年の4人に3人が日本の将来は「暗い」との結果が出ていました。そのような意識にも関わらず、救いは今回の調査で将来の夢が「ある」との回答した若者が62.6%もいたことです。

今朝の新聞各社は成人の日に際し、次の様な社説を出しています。朝日、「成人の日―荒海のなかへ船出する君」読売、「将来の選択は地に足を着けて」 産経、「成人の日 危機にこそ若い力発揮を」

どの社説も困難な時代だけれども、将来に向かって頑張れということを言ってい ます。この困難な時代を若者たちに与えたのは他でもない論説委員を含む私どもです。社説の題名を見て、何か空々しい気分がするのは私だけでしょうか。

今の大人たちのやっていることは、とても若者の手本になるとは思えません。ガザでは人命を何とも思わない殺戮が続き、ロシアは天然ガスの供給を止めて供給先の人たちを凍えさせ、もたつく日本の総理の支持率は遂に2割を切りました。こんなことでは若者たちに贈る言葉がある筈もありません。


1月11日
最近の人民日報電子版を見ていますと、対日姿勢の軟化と言うか変化を示す記事が目立ちます。特に昨秋からの経済危機が始まってからこの傾向が強まりました。中国政府が世論の誘導を行っているのです。

主な日本関係の記事の見出しを見ますと、「東中国海のガス田問題が再燃 中日双方は危機の回避を」「日本人の対中親近感が低下----冷静で理性的な反応を」「中国は非識字者ゼロの日本に学ぶべき」「水の都」大阪の魅力は無限」「中日協力の新たな余地」などです。

今朝の産経によれば、中国当局は世論統制を強化し、社会の安定化に努力しているとのことです。記事の中で、「社会の安定重視は、尖閣諸島(中国名・釣魚島)の領有権を主張する反日団体が今月10日に湖南省で開く予定だった会議が当局の意向で突然中止となったことにも表れている。」とあります。これは、昨年秋から続いている軍の強硬派とされる将軍達の尖閣列島などをめぐる強硬発言などを押さえ込もうという意図も見られます。

このような傾向は江沢民時代の対日姿勢を大きく変えるものであることは間違いありません。中国政府が対日姿勢を何故反日から軟化路線へ変えて来たのか、理由は多々あるにしても、それが中国の国益に益するからに違いありません。

最近の中国経済は深刻な危機に見舞われています。09年には08年より成長率は低下し、1/四半期には5%程度となるとの見込みを政府系の経済人が言っています。08年の8%成長が中国にとって何とか現状維持ぎりぎりのラインと言われていますから、5%成長では国民の生活は落ち込むことになります。

9日に行われた日中戦略会議に臨み、「突如襲った金融の津波は、中日両国に深刻な衝撃をもたらすと同時に、双方の協力の余地をにわかに増大させた。」と人民日報は書いています。苦しい時の日本頼みという状況が現れていると言えましょう。



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