平成21年6月下旬の記事




6月30日
今朝の産経正論にクライン孝子氏が「死ぬ権利」が欧州で広がっているとし、日本にとっても、「死ぬ権利」としての安楽死と尊厳死の問題は、対岸の火事として見過ごすわけにはいかないだろうと書いています。私も古希を2年前に過ぎましたが、還暦から今までの10年が過ぎる速さは尋常ではないように感じます。これからの10年は、これにも増して早く過ぎて行くのではないかと思いますから、その時の準備は心の問題だけでなく、周囲に対する意思表示の面でも大切と思います。

最近の医療環境では、人生の終末期は医療処置により生かされている時期があるのは、ある程度やむを得ないことです。病が重くなり、自分で栄養を摂取できなくなると先ず鼻からの管で胃に食餌を注入する、それが難しくなると胃ろうと言って腹部に穴をあけて直接胃に栄養を送り込む、或いは中心静脈注射などが行われますが、この処置が行われる時点では患者は自分の意志を伝えることができない場合が、特に脳血管障害の場合などに多いのです。

私事にわたりますが、97歳の義母が今その時期にあります。義母は息子が医者で近くに住み、今は甥の医者が経営する医院で闘病中という恵まれた環境にいますが、既に意識混濁、会話不能の状態にあり、鼻管経由で栄養補給をしています。端的に言えば、ペースメーカーと強制栄養で生かされているのです。この間、誰もがその時々の処置を延命処置だなどと考えたことはない筈ですが、その時の病状に応じた医療を行った結果、こうなってしまったのです。

いつの時点で延命措置を止めるか、特に自分の場合にはどうするか、しっかり考え、処置して置かないと今の医療に任せると望まない方向へ行ってしまう可能性が高いのです。自分自身のことだけでなく、家族にも経済的のみならず心労や体力消耗など大きな負担を掛ける時期が長くなります。私は、長期の人工呼吸器使用は勿論、胃ろうや中心静脈注射は拒否する旨の意思表示を今のうちにやっておこうと考えています。


6月29日
日韓首脳会談が行われました。韓国で金大中、盧武鉉と親北大統領が続いた後だけに、ようやくまともな会談が行われたと思います。とは言え、麻生総理は奇跡が起こらない限り長くても9月までの在任ですし、李明博大統領は盧武鉉前大統領自殺による支持率低迷のショックからまだ立ち直っていない状況にあります。お互いに、特に麻生氏にとっては自分の発言が具現化して行くことに責任を持てない状況と言えましょう。

日韓両国の関心の的である北朝鮮政策においても、米中という安保理常任理事国であり、核保有国であり、かつ北朝鮮に強い影響力を持つ国に伍し、半島の安全保障に関与したいという願望はなかなか叶えられません。首脳会談で北抜きの五ケ国協議を開く事で一致したのもその顕れです。

日本が拉致問題で対北政策の自由度を制約されている現実がありますが、韓国は李明博政権発足で軍事面で思い切った政策を取りつつあります。韓国国防部は26日に「国防改革2020調整案」を発表し、これは「核、弾道ミサイルなど北朝鮮の非対称的脅威を敵地域で最大限遮断・除去するために精密な打撃・迎撃能力を拡充する計画だ」と述べています。

この戦略は、北がミサイル攻撃などを発起すれば発射基地を精密攻撃し可能な限り北朝鮮地域内で無力化する、という積極防御の概念を含んでいるとされており、日本が未熟な論議をしている先制攻撃の議論を既に具体的な計画としています。

これまで金と食料を北に貢いで来た韓国のこのような変貌に北がどのように対応するか、太陽政策の失敗が明瞭化した後のことだけに、日本もしっかり見ていなければなりません。

2020調整案によれば、情報収集では多目的実用衛星、偵察機、無人偵察機、弾道弾早期警報レーダーなど、攻撃手段ではF-15Kと合同遠距離攻撃弾などによる精密打撃、防御手段では海上迎撃誘導弾と地上パトリオットミサイルによる迎撃が挙げられています。合同遠距離攻撃弾とは何を言うのか不明ですが、対地攻撃用の弾道或いは巡航ミサイルをいうものと思われます。


6月28日
F-22を巡り、ホワイトハウスと米議会の対立が深まっています。下院は25日にF--22の調達を継続する条項を盛り込んだ国防権限法案を圧倒的多数で可決し、上院軍事委員会も同様な法案を可決しました。これに対し、ホワイトハウスの報道官は国防長官がこの法案に拒否権を行使するよう大統領に勧告するだろうと述べ、大統領は拒否権を行使するだろうと警告しています。

また、エビエーション・ウィークの報道は、F-22の調達継続を主張しているダニエル・イノウエ議員は藤崎駐米大使宛ての書簡で、仮に2010年に契約がなされれば、4年間の輸出バージョンの開発とテストが必要であり、生産は2014年にも開始でき、2017年に日本へ渡すことができると、極めて具体的です。また、イノウエ議員は、日本は調達予定の40機のF-22につてい1機当たり290百万ドルを支出することを認めるだろうと報じています。

このホワイトハウスと議会の対立は、産業界の要請を満足させることと雇用確保に尽力することが使命とも言える議員と、国際軍事情勢と資源の最適配分を図った上で軍事力造成を図る政府とのせめぎ合いと言えましょう。これが国内事情だけを踏まえるなら事はまだ簡単ですが、同盟国への武器供与が同盟強化の一環であり、かつ米国の経済を潤す一面もありますから、オバマ大統領も苦慮するに違いありません。

また、米空軍はF-22を1機142.5百万ドルで取得していますので、対日供与の価格290百万ドルは米軍の約2倍で、如何にも高すぎます。仮に、対日供与が可能となったとしても日本国内の議論は沸騰するでしょうし、その時、民主党が政権を獲得していれば、また一悶着あるに違いありません。それにしても、オバマ大統領はどう決断するのでしょうか。


6月27日
何かの事柄に対処しようとする時に「冷静に」という言葉が目につきます。特に安保・防衛関係の対応に多く使われているような気がします。では「冷静に」とはどのような意味なのか、いま一つ分かりません。広辞苑には「感情に動かされることなく、おちついて物事に動じないこと」とあります。

最近冷静にという言葉が頻繁に使われたのは、新型インフルエンザへの対応でした。厚生労働大臣から、或いは感染症の専門家から冷静にと言われて、それではどう対処したら良いのか、大方の人たちにはどうしたら良いのか知恵が浮かばなかったのではないでしょうか。感染しないため外出を控えるのが冷静なのか、大事には到りそうもないと普通の生活をするのが冷静なのか、誰も言ってくれませんでした。

冷静にという言葉が社説で使われている例は枚挙に暇がありませんが、安保・防衛問題については今朝の朝日の社説「船舶検査法」について「冷静に審議するべきだ」との主張、今月1日の毎日の社説「敵基地攻撃論 ムードに流れず冷静に」がありました。このように安保・防衛問題に関して「冷静に」という枕詞を入れますと、これはブレーキを掛けるべきだという言葉と同意に使われているように思います。

これは一種の逃げの表現と感じられます。今朝の朝日の「冷静に審議を尽くすべきだ」いう表現は、冷静にという枕詞を外しても実質的な意味は何ら変わることはありません。

毎日の社説は「攻撃兵器の保有は、憲法9条を根拠にした国防戦略である専守防衛のあり方にかかわるほか、近隣諸国との外交や東アジアの安全保障情勢への影響、さらにこれが危機への現実的対応であるかどうかなど検討課題は多い。冷静な対応が必要である。」と書いていますが、「冷静な対応が必要である。」との文章は何を言いたいのでしょうか。恐らく攻撃兵器の保有論議にはブレーキを掛けるべきだと言いたいところを冷静にという言葉で誤魔化しているのです。

冷静という言葉の反語は、辞書によれば「興奮」です。船舶検査でも攻撃兵器保有でも、議論が興奮して行われているとはとても思えません。


6月26日
去る4月5日に放送されたNHKペシャル シリーズ「JAPANデビュー」・第1回「アジアの“一等国”」で、日本の台湾統治の状況が放映されました。これが実情をつたえておらず、日本を貶めるものであるとの声が日本のみならず台湾においても続いています。私もこの番組を見始めましたが、あまりの偏向振りに見続ける意欲が萎え、スイッチを切った記憶があります。

この番組が放映されてから、李登輝友の会など多数の団体がNHKに対する抗議をネット上やデモ行進などで続けて来ましたが、昨日、この番組で精神的な苦痛などを受けたとして、日本国内の8,300人が原告として損害賠償や慰謝料など1人1万円の支払いを求める訴訟を起こしました。

NHKの番組にかなりの偏向したものがあることは周知のことですが、上記の放映について自民党有志議員が、報道内容を検証する「公共放送の公平性を考える議員の会」(仮称)の準備会合を国会内で今月始めに開いています。

また、台湾側もネット配信の「台湾の声」などを見ますと、抗議活動を盛んに行っていますから、NHKは内外から非難を浴びる状況が深刻になっています。

2年前に従軍慰安婦に関する模擬裁判をNHKが放映し、これを安倍晋三議員らが問題視する事例がありましたが、その後NHK経営委員会の小丸成洋委員長は、NHKの職員が(国会議員に)個別の番組を説明することはないと述べ、番組制作の自立性を保持する立場を示しました。

今回の番組では、日本の統治が台湾住民達に過酷で人権を無視したものであるとの一方的な見方で作られたものであることは、ある程度の知識がある人から見れば明らかです。それであるからこそ、抗議の浪が盛り上がっているのであり、このような偏向した番組制作が「依らしむべし、知らしむべからず」とばかりに日本を貶める方向へと情報操作していると感じられます。

NHK経営委員会は公権力からの独立を保障する目的で設置されたものとされていますが、そうだと言って「戦争と女性への暴力」日本ネットワークの松井やより 元・朝日新聞記者のような明らかに偏向している人たちが主催した模擬裁判を特集で取り上げるなどということは認めるべきではありません。しっかり仕事をして貰いたいものです。


6月25日
宮崎県知事東国原氏に自民党選対委員長が衆院選への出馬を要請し、「私を総裁候補にして戦う覚悟はあるのか」と言ったとか、言う方も言う方ですが、言われる方も情けないというのが大方の受け取りようでした。最近、知事に勢いのある方が次々と登場し、地方自治を活性化しているのは気持ちよいものです。それが国政となるととたんに人材不足、というよう払底しており、麻生総理を代えるにも代える人が見当たらないのが自民党のアキレス腱、東国原氏にその点を突かれたとも見えます。

昨日の朝日は民主党の政策原案について、特に外交政策についての記事が掲載されていました。外交については理念が先行し、政策の全体像が見えないと珍しく苦言を呈しています。

昨年来、知日派とされる米学者たちから民主党が政策として主張している政策について反米と見られるから触れないようにと指摘されていた4つの点がありました。民主党が柱の一つとしている米国との役割分担の方針とも一致していないのです。
@ 日米地位協定の抜本見直し
A 在日米軍再編の「不断の検証」
B テロとの戦いでアフガン本土への自衛隊派遣は当面せず
C インド洋で給油活動をする海上自衛隊の撤退
政策原案ではこの4点にノータッチで、逃げている印象があります。

地位協定の見直しは、米国が米軍の活動を制約するものと見るのは当然のこと、アフガンやインド洋における対米協力拒否の姿勢も反米と見られるのも当然のことです。

政策原案を見ますと、自衛隊の海外派遣については、「国連憲章第41条(非軍事措置)、42条(軍事措置)によるものを含め、主体的判断と民主的統制のもとに積極的に参加」としてあります。第42条には「第41条に定める措置では不十分であろうと認め、又は不十分なことが判明したと認めるときは、国際の平和及び安全の維持又は回復に必要な空軍、海軍又は陸軍の行動をとることができる。この行動は、国際連合加盟国の空軍、海軍又は陸軍による示威、封鎖その他の行動を含むことができる。」とあり、これまでの自衛隊の活動の範囲とは全く異なった活動を行うことになります。

これまでの自民党政治の海外での武力行使を認めないという立場を覆すものであり、これに民意が速やかに応ずるということは考えられません。

この二つの事項、対米協力と自衛隊の海外派遣を見ても、その平仄の不一致は呆れるばかりですが、現実に政権を獲得した場合にはどう政策を実行してゆくのか、多くの船頭が勝手な方向へ櫓を漕ぐのでは国民はたまったものではありません。


6月24日
22日付けのニューヨークタイムス紙が米国の軍事戦略の見直しについて詳細に報じています。これから予想されるより複合された従来型の戦い、不正規戦、或いはテロリストとの戦いなどに備えるとのことです。

この中には、コンピュータネットワークやGPSシステムへの攻撃、ミサイルや道端爆弾による攻撃、テレビとインターネットによる宣伝キャンペーンなど、あらゆる可能な脅威のスペクトラムへの対処が含まれています。

この新戦略については、米軍のイラク、アフガンにおける戦闘の教訓が深く浸透しているように見えます。即ち、プレシジョン・ミサイルへの対処と路端爆弾への対処を並列して述べているのは、この二つの脅威が殆ど同じレベルの脅威であるとの認識があるからと思われます。またインフォーメーション・ウォーへの対処が喫緊のものとしているのも特徴的です。

また参考とされた最近の戦訓には、2006年にイスラエルに対抗したヒズボラが使用した高精度の長距離ミサイルなどのハイテクの脅威があり、ロシアがグルジアに介入した際に戦車、降下部隊、戦闘艦などの投入よりもコンピュータのネットワーク攻撃が優先された事例などが引用されています。

ゲーツ国防長官がF-22の生産終了を宣言しましたが、この宣言にはこの戦略見直しが深く関わっていると思われます。長官はF-22はイラクやアフガンにおける戦闘には役立つことは無かった。将来の戦闘機は、制空、地対空ミサイル回避、隠れている非正規軍の爆撃などの能力に優れた機体でなければならないとしています。つまり、F-22のような制空に優れた能力を発揮する戦闘機よりも、対地攻撃能力に優れ、かつ防御力に優れた機体が必要だとしているのです。

米軍が直面している課題は多様化する一方で、宇宙から核戦争、従来型の戦争、非正規戦、テロリストとの戦い、情報戦などの戦いだけでなく、救難から災害対処までやらなくてはなりません。この中で、効率的な武器体系を整備しようとすれば、F-22よりF-35という選択をゲーツ長官がしたのだと思います。


6月23日
米下院軍事委員会が2010会計年度の予算を可決しましたが、その中にF-22の輸出バージョンの開発コストが含まれ、輸出の可能性の検討を国防長官に要求しています。ゲーツ国防長官は、この動きに不快感を示し、議会と対立する状況が続いています。

日本の各紙の報道では、F-22の輸出は日本向けだとされていますが、果たして米議会は日本だけを対象としているのか、分かりません。米国の報道によれば、日本及び他の同盟国とあり、日本が主対象となっておりますが、他の同盟国も除外されている訳ではありません。

軍事委員会が国防長官へ要求した事項は次のとおりと報道されています。(1)輸出仕様の価格(2)技術的な可能性と開発期間(3)対日輸出の戦略的評価(4)米航空産業に与える利益と不利益(5)法律改正の必要性即ち、対日輸出の戦略的評価が含まれていますので、主対象が日本である事は間違いないことと思われます。

日本政府はF-22を40機調達することを米側に示しているようですが、ペンタゴンはこれには大きな障害があるとしています。しかし、議会筋はこの障害となっている法的障害を取り除く可能性があるとし、この場合、日本は10〜20億ドルをこの機体のハイテク取得に支払うことになるとの見通しを述べています。

米空軍の状況ですが、NHKの報道によれば、航空戦闘集団司令官コーレー空軍大将はF-22の調達停止に反対している上院議員の一人に、同機の調達終了に反対する旨の書簡を送りました。田母神前空幕長は民間の論文募集に応募して馘首されましたが、米空軍メジャーコマンドの司令官は政治家に国防長官の意向に反する書簡を送る自由があるのです。


6月22日
今月6日の本欄で、金正日の三男金正雲が胡錦濤主席と会談したとの朝日の報道について、誤報である可能性もあること書きました。その後、朝日は16日付けの記事でその会見に長男の金正男が同席したとの報道を加えました。同日、中国外務省の報道官はそのような事実はなかったとし、スパイ小説のようだとまで言って全否定しました。

朝日と中国外務省のどちらが正しいのか、どちらかが嘘を言っていることになります。これについては、最初の報道があってから既に二週間以上経過していますが、外国通信社を含めて朝日以外には報道はありません。朝日の報道は北京駐在の峰村記者の記名記事ですから、峰村記者はよほどの取材源を持つ記者なのかも知れません!。

また、金正雲側近が長男の金正男暗殺を図り、中国政府がこれを阻止して正男を保護していると韓国紙が報道しましたが、これは朝日の金正男が胡錦濤主席との会談に同席したという報道と矛盾します。金正雲がスイス留学していた時の報道も過熱していますが、その男子が金正雲だという確証はありません。

その他金王朝の周辺には怪情報が乱れ飛び、どの情報にも眉に唾を付けて見なければなりません。この中で明らかな事は、中国政府が金正雲に関する報道を認めなかったことです。即ち、金正雲と胡錦濤主席との会談が仮にあったとしても、なかったとすることで、金正雲の後継者としての立場をまだ認めていないことを示していると考えられます。

国連安保理による北朝鮮制裁決議に、中国は不請不承の様子を見せながらも同調し、国際社会との協調を優先させました。北朝鮮が核保有国になれば、朝鮮半島は不安定化が進みますし、益々中国の言う事は聞かなくなります。従って、核実験には不同意は明らかです。

中国指導部も北朝鮮政策では一枚岩ではありません。金王朝が不安定化している今、政策が揺れ動くことが予想されます。